@ MoMA
2012年1月9日まで
MoMAの6階特別展示室ではウィレム・デ・クーニングの大回顧展が開催されている。オランダ生まれのデ・クーニングは22歳の時に渡米し、ニューヨークで活躍した抽象表現主義の画家である。
同時代に活躍したジャクソン・ポロックの方が名が知られているが、しかし当時のニューヨークで起こった抽象表現主義の中心的な存在だったのはむしろデ・クーニングであった。人嫌いなポロックに対して、デ・クーニンはいつも人の輪の中心にいて、カフェなどで仲間たちと美術議論を交わしていたといわれる。
しかし、ポロックはアクション・ペインディングやドリッピングというスタイル・技法を確立し、それが現在でも広く知られている一方、デ・クーニングは「女」のシリーズが知られている程度である。しかし実際のところ、デ・クーニングは同じ事を繰り返すのを嫌い、常に新しい絵画を目指した画家であった。もちろん、どの作品にも共通するような特徴は見られるものの、デ・クーニングは一つのスタイルに留まる事なく、ころころと作風を変えていった。「女」という彼の代表的なモチーフを扱う事は、彼のキャリアのうち何回もあったが、その一方で風景にインスパイアされたような抽象画もかなり多く描いている。それは、ドリッピングを確立してから行き詰まり低迷してしまったポロックと大きく異なる点でもある。また、それがデ・クーニンの研究がこれまで十分にされてこなかった理由の一つでもある。つまり、つかみどころがなく、簡単に要約できるようなアーティストではないのだ。この展覧会は、そうした彼の作風が次から次へと変わっていく様を見る事ができる初めての機会となっている。
デ・クーニングの魅力はやはり、スピード感のある力強い筆跡であろう。それは時には攻撃的にも見える。彼の代表作である「女」のシリーズでは、そうした攻撃的な筆遣いでモチーフである女性の姿形を壊して行く過程が、描く事で女性そのものを攻撃・破壊していく過程となり、最後には女性への愛憎が現れてきているようだ。個人的にはそんなこともあり、「女」シリーズはそれほど好きではないのだが、それ以外の絵画はもっと単純に楽しめる作品になっている。風景からインスパイアされたような作品も多く描いているが、そうした作品では筆跡も攻撃的というより、むしろ潔い印象を与える。また後期の抽象画では『Whose Name Was Writ in Water』や『Scream of Children Come from Seagulls』のような詩的なタイトルを付け、作品により深みを与えている。(ちなみに『Whose name was writ in water』は19世紀の詩人ジョン・キーツの墓石に掘られている言葉である。)

0 comment:
Post a Comment